実戦中国拳法・太気拳

澤井健一著
定価=2,500円(税抜き))
発行=日貿出版社
TEL:03-5805-3303

「気」って何だろうか? かつて「触れずに人を飛ばす気のパワー」などと大々的にマスコミでもてはやされていたことをご記憶の方も多いと思う。強さに憧れる男にとってこんな魅力的なことはないだろう。しかし、汗を流さず強くなろうなんて虫が良すぎる。何事においても、その人の持っている才能と努力なしには成し得ないものだということは自明の理。
では「気」は存在しないのだろうか? その答えを出しているのがこの技術書『太気拳』だ。
太気拳(たいきけん)という武術は故澤井健一先生が創始したものだが、そのルーツは中国拳法の形意拳にある。形意拳を中国全土に知らしめたのが郭雲深という達人だ。この郭雲深の優れた弟子の中に王向齋という実力者がいた。王向齋は当時の中国で「国手」と謳われるほどの達人だった。彼は「這(はい)」という独特の練習法を考案し、「大成拳(意拳)」を創始した。その大成拳を中国で学び、師・王向齋の許しを得て始めたのがこの太気拳だ。
中国拳法というと実戦空手を学ぶ人々にとっては、格闘技オタクの遊びと受け止められているが、日本に流布されている多くの中国拳法はその域を出ないのが現状だ。しかし、この太気拳は違う。これほど合理的な拳法は他にないと言っても過言ではない。生前の澤井先生を知る私にとっては、その技術と人間性は永遠の憧れなのだ。
2016年5月現在、[新装増補版]定価=2,500円(税抜き)発売中

『バトルスピン』1992年7月号

 

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